幸せにしたいのは君だけ
だってこの人の本心がつかめない。

そもそもこんな、なにもかも手に入れられるような完璧な男性が、外見を飾り立てることでしか自信を持てないような私を、好きになるはずがない。


勝気で、ズケズケと遠慮ない言い方しかできない私なんて、可愛くもなんともないし、魅力があるなんて到底思えない。

かといって、人一倍仕事ができるわけでも、特別なスキルがあるわけでもない。

私を選んだところで、この人にはなんの利点もない。


「……知ってます。でも、私は有望株ではありません」

「俺には十分すぎるくらい、有望株だ」


私の不安をあっさりと霧散させる。

信じそうになってしまう。


“女性には本気にならない”“去る者は追わず来る者は拒まず主義”


何度も耳にした噂話。

そんな人に、気持ちを傾けるなんてできない。

この人を好きにはならない。

好きになんてなりたくない。

絶対に。


「今すぐに信じるのが無理でも、これから信じてもらえるように努力する」


頬に触れていた手がゆっくりと私の髪を撫で、額にそっと口づけられる。


「け、圭太さん………!」

「俺なりの誓いのキス。本当は唇にしたかったんだけど」


反射的に口を両手で覆うと、クスクスと声を漏らす。
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