幸せにしたいのは君だけ
「――へえ、珍しい。でもいいんじゃない? そのほうが佳奈らしい。そもそも、外見はそんなに女の子っぽくて可愛らしいのに、性格は昔からびっくりするくらい男勝りだもんね」

「……悪かったわね」

「褒めてるの。自分の意見をしっかり持っていて、思っていることをはっきり口にできるのは美点でしょ。しかも佳奈の場合、言い方を心得ているから相手を不快にもしないし。本当そういうところ、器用で羨ましい。営業課に異動したらいいのに」


急に褒められて戸惑う。

確かに営業課においでよ、と何度も誘われていた。

私自身は今の仕事が好きなので、特に不満はないのだけど。


「……ありがとう」

「どういたしまして。以前の髪の色、ハニーブラウンだったっけ? 私と同じくらい明るかったのに、急に焦げ茶色に変えたのは、そういう心境の変化だったのね」


同期の視線が私の髪に移る。

簡単にリボンゴムでまとめて、緩く巻いた髪の長さは背中半分くらいまである。


「うん、まずは外見から変えようかなと思って。……似合ってない?」

「よく似合ってるわよ。それにその気持ちはよくわかる。で、本気で恋をしたくなったわけ? 残念ながら、その相手は結婚式では見つからなかったのね」

「だから、婚活しに行ったんじゃないって」

「わかってるわよ。でも、その結婚式って噂のあの人も来てたんでしょ?」


親友のアーモンド形の二重の目が、私を見据える。


「……そりゃそうでしょ、幼馴染みなんだから」


端的に答える。
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