幸せにしたいのは君だけ
「じゃあな、おやすみ」

「あ、あのっ、ご両親に連絡はされたんですか?」

「両親? なんで?」

「だってご実家に泊めていただくんですから……きちんとお礼を申し上げないと……」


口にした途端、ブハッと噴き出される。


「な、なんですか?」

「佳奈はいい意味で期待通りだな。外見と中身がそれだけ乖離している女性に会ったのは初めてだよ」

「馬鹿にしてます?」

「まさか、最上級の褒め言葉」


そう言って、彼は満足そうにクシャリと私の髪を撫でる。


「両親にはきちんと報告しておく。本気の恋の相手が見つかって、今日泊めるって」

「ご、誤解を招く言い方をしないでください!」

「いずれそうなる予定なのに?」

「私は了解していません!」

「ハイハイ」


まるで幼い子どもをあやすようにあしらわれて、憤慨する。


「とにかく、きちんとお礼を伝えてください」

「俺は佳奈のそういうところが好きだよ」


天気の話でもするかのようにさらりと口にする。


「なにを……」

「それより俺は、佳奈のご両親に、今晩泊める件をお伝えしたいんだけど?」

「ひ、必要ありません!」
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