幸せにしたいのは君だけ
なにを言い出すの!?


そんな連絡をされたら、両親が卒倒してしまう。

父など渋面を浮かべて質問攻めにするだろう。

下手したら、どういうつもりだ、と血相を変えてここまでやってくるかもしれない。


私はもういい年をした大人なのに、両親――とりわけ父はとても心配症だ。

思い返せば、学生時代から彼氏ができる度に不機嫌そうにしていた。


「当然だろ、大事なお嬢さんを一晩お預かりするんだから。そもそも俺が先にその話をしようとしていたのに、先を越されたし。ご両親にはきちんとご挨拶をさせていただかないと」

「絶対にやめてください! なにを言うつもりなんですか」


なぜか意気揚々と告げる彼の言葉にかぶせるように言い放つ。


「最後の彼氏になる予定の佐久間です、かな」

「ふざけないでください!」

「――ふざけてない。本気だ」


先ほどの朗らかな会話から一転、突然の真剣な目と声にひゅっと息を呑んだ。


「俺は佳奈と適当な付き合い方をする気はないから」

「だって、挨拶って、そんな軽々しく……」

「軽々しくない。言っておくけど、恋人の両親に挨拶なんて今までした経験はない」


さっきまでの軽口とは違う冷静な口調に、冗談ではないと思い知らされる。


なんで?

どうして急に本気だなんて言い切るの?
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