幸せにしたいのは君だけ
「どうか皆様にお礼をお伝えください」

「堂々と受け流すのは、やめてくれないか?」


まったく困ったようには見えない笑みを浮かべて、彼が言う。


「両親には報告しておいたから」

「……なんて説明されたんですか?」

「内緒」

「どうしてですか!」

「そのうち言う。ほら、冷めないうちに食べよう。それから佳奈の家に送るから」

「え?」

「買い物に行こうって言っただろ?」

「違います、送るって……」

「もちろん車で」


しれっと言うその態度が腹立たしい。

朝食後に送ってくれるなら、昨夜送ってくれたってかまわなかったのではないか、と反論したくなる私は間違っていないないはず。

それなら泊まらずにすんだし、朝から気まずい思いをする必要もなかったのに。


「どうして私が一緒に行かなきゃいけないんですか?」

「アドバイスをするって言っただろ? まずは佳奈に似合う服を探しに行こう」

「け、結構です!」

「そのお願いは聞けないな」
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