幸せにしたいのは君だけ
約束通り自宅に送り届けてくれた彼と、一時間後に大きなショッピングモールやデパートがある駅で待ち合わせになった。

私の自宅から電車で十分ほどの場所だ。


一時間後に自宅に迎えに来ると言われたけれど、さすがにそれは断った。

私の何倍も激務をこなす彼は疲れているだろうし、なにより余計な手間をかけさせたくない。


しかもこんな美形が突然自宅に尋ねて来たら母が気絶する。

……もしかしたら質問攻めにあわされるかもしれない。

その可能性を考えて、今朝もマンション前で別れたくらいだ。

彼は母に挨拶をしたがっていたが、丁重にお断りをした。


手持ちの服を何着も部屋中に広げて、着ていくものを選んだ。

帰宅した途端、衣装選びを始めた私に、母は怪訝な表情を浮かべていた。


結局、普段会社には着ていかないシンプルなワイン色のワンピースに決めた。

前身ごろは余計なデザインはまったくなく、後ろに異素材の切り返しがあるものだ。

華やかさとは程遠いが着心地がよく、なによりも私にはしっくりくるデザインだった。


約束の時間の十分前、最寄り駅について周囲を見回す。
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