幸せにしたいのは君だけ
評判なんてあてにならないと、身をもって知った気がしていた。

それなのに。

今、こうして隣を歩いて、手を繋いでいるのがなによりも嬉しくて安心するなんて信じられない。

なにもかも見透かすような綺麗な目が苦手だったはずなのに。


緊張はいまだにするけれど、圭太さんの視界に映るのが幸せだと感じてしまう。

憎まれ口をたたきながらも、可愛くない反応を返しながらも、この人のそばにいたいと願ってしまう私がいる。


一体、どうしたんだろう。

好きな人は今まで、冷静に選んできた。

無謀で叶いそうもない恋なんて敬遠してきた。

よく知りもしない人に気持ちを預けるなんて、ありえないはずだった。

いくら恋愛は自由だと言っても立場の違いくらいはわきまえているつもりだった。

私とこの人では釣り合いがとれない。


結果の見えている恋愛なんて、するつもりはなかったのに。

この人はただの同志で、私は“本物の恋人”“本当に好きな人”を今度こそ見つけるはずだったのに。


どうしてこんなに惹かれてしまうんだろう。

心が揺さぶられるんだろう。

この人の一挙手一投足から目が離せなくなる。

もっとそばにいたいと願ってしまう。
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