幸せにしたいのは君だけ
圭太さんの求める“本気の恋人”が、私の求めるものと同じなのかもわからないのに。

ただ“好き”だけで突っ走れるような年齢はとっくに過ぎてしまったのに。


どうしたらいいんだろう。

このまま、この想いに身を委ねていいのだろうか。


……この人を好きになっていいのだろうか。


心をよぎる微かな不安と期待。

その両方が私に迫る。


「佳奈」


物思いにふける私の名前が優しく呼ばれる。

ふいに離された指に小さな不安を抱くと、ふわりと長い両腕に身体を包み込まれた。

広い胸に引き寄せられる。


「け、圭太さん?」

「……やっぱり、少しお礼をもらおうかと思って」

「え……?」


妖艶な眼差しが私を捉える。

長いまつ毛に縁どられた目が、ゆっくり伏せられて近づく。

彼と私の距離がゼロになる。


その瞬間、唇が重なった。

触れるだけの優しいそれは私の唇を宥めるように啄む。


ドクン、と心臓が壊れそうな音を立てた。

驚いて瞬きすらできない。

ただ触れる唇に意識が集中する。

短いキスの後、彼が私の目を覗き込む。
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