幸せにしたいのは君だけ
「それで、あんなにカッコいい彼氏ができたのになんでそんな冴えない表情なの?」

「……彼氏じゃないから」

「似たようなものでしょ。キスまでしたくせに」


赤裸々な言い方に、頬が一気に火照る。


「嫌だ、佳奈、照れてるの? 頬が真っ赤よ。今まで私が恋人についてどんなに揶揄ってもそんな反応しなかったくせに」

「ち、違うわよ。ビックリしただけ」

「本当、気づいていないのは当人ばかりってよく言ったものよね」


呆れたような口調の親友を軽く睨む。


「そもそも普通、なんとも思っていない相手をわざわざ実家に連れて行ったりしないでしょ。いくらご両親が不在だとしても。お手伝いさんやご近所の目だってあるんだし」

「圭太さんが帰国した時は実家に泊っているからなだけよ」

「あのね、立派な社会人の御曹司なのよ。ホテルでもなんでも宿泊する場所はあるでしょ。それなのにわざわざ実家を選んだのよ。これってものすごい覚悟じゃないの? しかも自分の両親に報告したんでしょ?」

「それは、私がせめてお礼を伝えたいって言ったから」

「佳奈が言うと下心もなにも感じないから、ある意味すごいと思うわ。性格の悪い女子が真似をするとなにかを企んでいるのかと疑われるのが関の山なのに。本当、人徳よね」


褒められているのかよくわからない。
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