幸せにしたいのは君だけ
「……買いかぶりすぎです」

『そうか? きっと君を異動させた上司は、そういうところに気づいてるんじゃないか? そういった内容の話はされなかった?』


ふと、昨日の朋井課長の面談を思い出す。

中途半端な時期だから、正式な異動は年明けを過ぎた頃になると言われた。

それまでに、以前作成した受付業務マニュアルをもう少し補完するよう指示があった。


また、少しずつ受付業務に従事する時間を減らして事務を経験するようにとも。

いわゆる二足のわらじ状態だ。

そんな器用な掛け持ちができるか心配ではあるけれど、少し楽しみにしている自分もいる。


澪さんが異動した時には、自分の仕事について少し意識したけれど、それまでだった。

圭太さんに出会わなければ、距離が近づかなければ、こんな風には思わなかった。

自分の業務についてそれほど疑問も覚えずに、きっとやり過ごしていただろう。

やりがいなんてものは考えなかったかもしれない。


朋井課長からは、ほかにも、総務事務に従事するなかでなにか改善点があれば遠慮なく言ってほしいと言われた。

年次は高くても、事務に関しては新人状態の私にそんな真似はできないと返答すると、だからだよと言われてしまった。

新鮮な目線が必要だからと。


さらに、事務に慣れてきたら、チームの仕事の割り振りを任せたいと告げられた。

その旨を簡潔に彼に伝える。
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