幸せにしたいのは君だけ
こんなの、もう好きにならずにはいられない。

でも臆病で意地っ張りな私はその一歩を踏み出せない。

仕事も中途半端で、遠距離恋愛に抵抗のある私は素直になれない。


『そうだ、佳奈。俺、多分年明けには戻るよ』

「年明け、ですか?」


思わず聞き返してしまう。

……クリスマスは会えないんだ。


『ああ。しばらく仕事が立て込んでて、休暇をうまく取れそうにないんだ。ごめん』

「なんで謝るんですか。圭太さんが悪いわけじゃないのに」


慌てて、いつもと変わらない調子で返事をする。

気を遣わせてはいけないし、求めてはいけない。


『それでも。うまく調整できなかったから』

「仕方ないですよ」


ウソだ。

本当は寂しく思っている自分がいる。


でもそんな本音は口に出せない。

出す資格はない。


顔が見えるかたちで会話していなくてよかった。

きっと今の私はひどい表情をしている。


『年明けに帰国したらデートしよう。それまで浮気するなよ』

「……なんの心配をしているんですか。私は圭太さんと違ってモテません。最近まで婚活していたくらいですから」


よかった。

いつもみたいに話せている。


『佳奈がそうやって憎まれ口を叩く時は、大体無理してるよな。寂しい思いをさせてたらごめん。クリスマス、一緒に過ごせなくてごめんな』
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