幸せにしたいのは君だけ
私の強がりを、心の奥底に隠した気持ちを見透かしたような言葉に息を呑む。


なんでわかるの。

一緒に過ごした時間なんてとても短いのに。

なぜこの人はこんなにも私の脆い部分をすぐに探り当てるのだろう。


「大丈夫、です」


ほんの少し涙が混じってしまった声に、彼は気づいただろうか。


『佳奈の“大丈夫”は信用していないから大丈夫。電話するし、メールも送るから』


今でもこの人は、私に多大な時間を割いてくれていると思う。

時差だってあるのに。

私のために、どうしてここまでしてくれるのだろう。


彼のさり気ない優しさが、温かな気遣いが、私を弱らせる。

頑張らなくていいんだと無理をしなくていいんだと暗に言われているような気分になる。

私はこれほど脆い人間だっただろうか。

……こんな気持ちは初めてでどうしていいかわからなくなる。


『寂しくなったり、つらくなったらいつでも連絡してきて』

「そんな言い方したら、調子に乗って甘えますよ?」

『いいよ。佳奈を全力で甘やかすのが、俺の最大の幸せだよ』


冗談めかして言ったのに、さらりと返されて困惑してしまう。

このままじゃ、私は圭太さんをどんどん好きになってしまう。


『ほかの誰でもない俺に、ちゃんと甘えて』


……この人は私の心臓を止めるつもりだろうか。

きっと私は彼に一生敵わない気がする。
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