幸せにしたいのは君だけ
「へえ! やっと決断したんだ。おめでとう、よかったわね」

「まだ、告白してないってば」

「佐久間さんは返事待ちの状態なんだから、佳奈さえオッケーすれば、即恋人になれるでしょ。さっさとしちゃいなさいよ。電話だってほぼ毎日してるんでしょ?」

「……そんな簡単に言わないでよ」


覚悟を決めたのはいいけれど、どう伝えたらいいのかを迷ってしまった。

千埜の言う通り、決心が鈍らないうちに、逃げ出したくならないうちに、電話でもなんでもいいから伝えるべきなのかもしれない。

でもそれは気が進まなかった。


圭太さんはきちんと私の目を見て、告白してくれた。

真摯に向き合ってくれた。

それなら私も彼の顔を見て、気持ちを伝えたい。

私の心の底からの想いを伝えたい。


「簡単じゃないわよ。これでも意地っ張りで臆病な親友を心配しているんだから」


そう言って、牛肉のステーキに舌鼓をうつ。


「それに最近、佳奈、ちょっと服装変えたでしょ? 御曹司の影響で」


チラリと私の装いに視線を向けた親友が、目ざとく言う。

今日私が身に着けているのは、先日圭太さんと初めてデートした時のワンピースだ。

あの日から少しずつ私はシンプルな服を着るようになった。

以前は地味ではないか、似合っていないのではないか、と気になっていた。

けれど今はそれがウソのように気持ちがスッキリしている。
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