幸せにしたいのは君だけ
「う、うん。実は元々シンプルな服装が好きだったから……」

「そうね、よく似合ってるわ。言われてみれば、そっちのほうが佳奈らしさが出てる気がするもの。でも悔しい。御曹司のほうが、親友に似合う服装を言い当てるなんて」


本気とも冗談ともつかない言い方をする親友に苦笑する。

なんだかんだ言ってもこうやって話を聞いて、一緒にいてくれる千埜には感謝の気持ちでいっぱいだ。

千埜がこうやって冷静に状況を分析して、背中を押してくれなければ私はきっとずっと尻込みしていたと思うから。


「いいなあ。私もそんな内面まで変えてくれるような人と、本気の恋がしたい」

「だから、婚活パーティーに行くんじゃなかったの?」

「佳奈を見てたら、真剣な社内恋愛がしたくなったの」

「なんで社内って限定するの?」

「婚活パーティーもひとつの出会いとしては素敵なんだけどね、なんていうか普段の自分の生活の中で関わっている人と真剣に恋をしたいというか……こう、カッコいい面もそうじゃない面も全部見て、恋愛したいなって思ったの」

「……なんとなくわかる」


親友の、いつになく真剣な声に同意する。
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