幸せにしたいのは君だけ
「佳奈」


私に気づいた圭太さんが、眦を下げる。

その瞬間、私の心臓はトクンと大きな音をたてた。


久しぶりに会う彼は、少し疲れているように見えた。

気になって尋ねると、多忙な毎日だったらしく、ほとんど身体を休めていないらしい。


「あけましておめでとう、佳奈」


もうずいぶん時間が経っているけど、と付け加えられた。


「……おめでとうございます……そんなに大変だったなら、別の日にしてくださってよかったのに……」


コートを脱いで、彼の向かい側に腰をおろす。

よく見ると顔色も悪い気がする。

無理もない。

長距離移動はそれだけで身体に負担がかかる。


「あの、今日はもういいので家に戻って休んでください」

「それだけは断る。俺がどれだけ佳奈に会いたかったと思う?」

「……私も会いたかったですよ。でも体調の悪い圭太さんを見るのはつらいです」


今日はできるだけ素直になろうと決めていた。

私の返答に彼が驚いたように見つめてくる。


「佳奈?」

「私のために、無理をしてくださるのは嬉しくないです」

「……ごめん。じゃあ今日はゆっくり俺と過ごしてくれないか? 身体がつらくなったら帰らせてもらうから」


眉尻を下げて申し訳なさそうに言う圭太さんに、大きく頷く。


「ありがとう、佳奈。それとその服、やっぱりよく似合ってる。着て来てくれてありがとう」


本当に嬉しそうな声で言われて、胸が弾んだ。

さり気ないひと言。

だけどそれがこんなにも私の気持ちを高揚させると、この人は知っているだろうか。
< 97 / 210 >

この作品をシェア

pagetop