幸せにしたいのは君だけ
「え……?」


圭太さんの足が止まる。

信じられない、といった様子で綺麗な二重の目を大きく見開いている。


「佳奈? 今、なんて……」

「圭太さんが、好きです」


すうっと小さく息を吸い、今度は大好きな人の目を見て伝える。

絡めた指が震えている。

足もガクガクしていて力を入れなければ、立っていられない気がする。

好きな人への告白が、こんなにも緊張して怖いものなんだと初めて知った。


「本当に? 本気で?」


確認するかのように問われて、ぎこちなく頷く。


お願い、私の気持ちを疑わないで。

どうか受け入れてほしい。


散々疑って、待たせてきた私が言える立場ではないとわかっている。

それでも願わずにいられない。


返ってくる言葉が怖くてうつむく。

ギュッと目を閉じたその時。


私の身体がきつく抱きしめられた。

ふわりと嗅ぎなれた香りが漂う。


「佳奈、佳奈……!」


隙間がなくなるくらいに引き寄せられ、耳元で何度も名前を呼ばれる。


「佳奈、本当に? 嬉しい……やっと俺のものになった」


かすれた声が耳朶を震わせる。


「……喜んで、くれるの? 私の気持ちを受け入れてくれるの?」


腕の中で小さく質問をすると、少し身体を離した圭太さんが私の目を覗き込んだ。


「当り前だろ。今日ほど嬉しかった日はないよ。……最高の贈り物をもらった気分だ。帰国してよかった」


ふわりと相好を崩して言う彼の目は、優しい光を帯びている。

温かな指が私の頬に触れる。
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