紡ぐべき糸
5
啓子が 卒業した高校は 派手な生徒と 地味な生徒が 極端だった。
レベルの 低い高校に よくあること。
派手な生徒は 歯止めが効かなくて 自由に遊び回る。
地味な生徒は 目立たないように ひっそりと卒業を待つ。
余裕を持って 入学した啓子は 上位の成績を 三年間維持していた。
高校に入るまで 人より 優れている所など ないと思っていた啓子。
「林さんは 成績が良いから。いいなあ。」
とクラスメイトに言われると、
「そんなことないよ。」
と答えながら 啓子は 少し嬉しかった。
ずっと 人の中に 埋もれて 生きてきた啓子。
美人でもないし 成績も良くない。
スポーツや音楽が できるわけでもないから。
啓子は いつも 自分に自信がなかった。