紡ぐべき糸
6
毎日 聡は 生き生きと 仕事をしていた。
ただ明るいだけではなく 聡は 努力家だった。
残業が少ない啓子も 毎月 締日の後だけは 少し残業になる。
「林さんも 残業?珍しいね。」
年末休暇を前にして いつもより 遅くまで 仕事をしていた啓子。
通りかかった聡が 声をかける。
「はい。今月は 給料日までが 短いから。」
啓子は 驚いて 上手く 答えられない。
『横山さんは いつも 遅いんですか』
と聞きたいけれど。
それさえも言えずに 啓子は パソコンに目を戻す。
給湯室で淹れた コーヒーを持って 聡は 自分の席に 戻ってしまう。
せっかく 声をかけてくれたのに。
話すチャンスだったのに。
後悔と 聡と話せた喜びが 啓子の胸で交差する。