紡ぐべき糸
胸がいっぱいで 聡と食事なんて できないと思っていた啓子。
聡に促され いつの間にか 料理を 食べ終えていた。
「美味しかったです。ご馳走様でした。」
食事が下げられて コーヒーが 運ばれた時 啓子は 聡に言う。
「こちらこそ。林さん、チョコ ありがとうね。」
聡は 真っ直ぐに 啓子を見た。
「でも 俺 林さんの気持ちには 応えられないよ。」
少し言い難そうに 聡は言う。
「いいんです。わかっていたから。でも 私 自分の気持ち どうしても 伝えたかっただけだから。」
啓子は 少し俯いて でも はっきりと言う。
「林さんは それで いいかもしれないけれど。聞いた方の気持ち 考えた?」
聡は 静かに言う。
厳しい言葉なのに 諭すような 優しい口調で。
啓子は 強い衝撃に ハッとして俯く。