紡ぐべき糸
確かに 啓子は 自分のことしか 考えていなかった。
自分を変えたくて。
自分が 前に進むために 聡を利用した。
聡を好きなら 聡のことを 一番に考えるべきなのに。
自己中心的な自分に 初めて気づいた。
「ごめんなさい。私。」
啓子は それ以上言えずに 口を閉ざす。
「俺の方こそ ごめん。言い方 キツかったね。」
聡の 優しい言葉に 啓子の目から 涙が溢れてしまう。
何も言えず 俯いて 必死で 涙を止めようと 啓子は 奥歯を噛みしめる。
聡は 黙ってコーヒーを 飲んでいる。
啓子の気持ちが 鎮まるのを待つように。
何も言わずに、静かに。