紡ぐべき糸
あの日 聡に言ったように 職場では 普通の同僚として 接する啓子。
聡の 仕事振りや 話し声には、 いつも 聞き耳を 立てていたけれど。
少しは ポーカーフェイスが できるようになっていた。
そんな啓子に 聡は 自然に 接してくれる。
構えずに明るく。
以前よりも 声をかけてくれるようになっていた。
「林さん、三浦工務店の請求書 印刷してくれる。」
朝 聡に言われて
「今ですか。明日、全部 発送しますけど。」
と啓子が答えると
「あそこの社長 特別扱いが 好きだから。今日 手渡しで 持って行こうと思って。」
と聡は言う。
「へえ。横山さんって そういう所 気が利くんですね。」
啓子は感心する。
聡は パソコンに向かう啓子に
「はい。お礼。」
と給湯室のコーヒーを 持ってくる。
「これ 会社のコーヒーですよね。」
と膨れて言う啓子。
聡は ニコニコ笑いながら 手を振って 事務所を出て行く。