紡ぐべき糸
そんな毎日は やっぱり 幸せだから。
聡の 近くにいるだけで 啓子は 楽しかった。
聡に 好きな人がいても。
啓子の思いは 受け入れて もらえなくても。
聡は いつも明るくて。
その笑顔を 見ることが 嬉しくて。
だから 聡を諦めることは 啓子には できなかった。
むしろ どんどん好きになっていく。
変わり始めた啓子は 以前は 気付かなかった 聡の人間性に どんどん惹かれてしまう。
啓子は そんな自分を 許していた。
いつか 聡が 誰かと結婚して 決定的な 大失恋をする日まで。
その時 ひどく傷付くとしても。
気が済むまで 聡を思っていようと。
ずっと 片思いでいいから。
毎日 同じ職場で 一緒に仕事ができるだけでいい。
聡が笑う声を 聞くだけで。
そして 時には 啓子に 笑いかけてくれるだけで。
そっと。
聡に 迷惑をかけないように 思い続ける決心をしていた。