紡ぐべき糸
「啓ちゃん 恋人とか いないの?」
二十五才を過ぎた啓子に 母が 心配そうに聞く。
「いないよ。」
啓子が答えると、
「そろそろ 結婚相手 探した方がいいわよ。」
と母は真剣に言う。
「やだ お母さん。私 まだ結婚なんて する気ないよ。」
と言う啓子。
「今はみんな 結婚が遅いけど。子供のことを考えたら 早い方がいいわよ。」
母は 中々、子供ができなくて 結婚して五年後に 啓子を産んだ。
「そうかもしれないけど。私は まだ結婚なんて無理。第一 相手もいないし。」
啓子は 笑いながら答える。
「お父さんの役所に 良い人 いるみたいよ。啓ちゃん 会ってみたら。」
食い下がる母に 啓子は驚いて
「止めてよ。結婚相手くらい 自分で見つけるから。余計なこと しないで。」
と啓子は強く言う。
心配そうに 啓子を見つめる母。