紡ぐべき糸

東京に向かう聡を 啓子は 応援する気持ちで見送った。


あまりにも淡くて 掴みどころのない恋だっだから。


そろそろ諦めて 父の職場の人と お見合いでもしようかと 考えながら。
 


聡に出会って六年間。


ずっと 思い続けてきた恋だけど。

ささやかな 思い出も 増えていたから。


そして 聡に 恋をしたことで 啓子は 成長できたから。


昔よりは 自分に 自信が持てるようになったから。


聡に感謝しよう。
 


聡が 東京へ向かった夜 啓子は 切なく涙を流した。

今頃 聡は 片思いの人と 会っていると思うと 啓子の涙は 止まらない。


聡の幸せを 願いながら。


叶うはずのない恋だと 覚悟していたはずなのに。


泣き疲れて眠るまで 啓子は 涙を流し続けた。
 

< 152 / 227 >

この作品をシェア

pagetop