紡ぐべき糸

啓子の思いに反して 聡の表情は 徐々に曇っていく。


出張から 帰ってすぐは 悔しいほど 浮かれていた聡。


でも時々 聡の瞳が 切なく 翳っていることがあった。

明るく 笑っているけれど。


多分 啓子しか 気付いていない 聡の変化。
 


年が明けて バレンタインデーが近付く。

諦めようと思う啓子を 聡の 切ない瞳は 引き留める。
 

「横山さん チョコ。一応 恒例なので。」


朝 啓子が 聡を呼び止める。

聡は スーッと 優しい笑顔で 啓子を見て、
 

「じゃあ、今日も ステーキだね。恒例だからね。」

と笑顔で言った。
 

「いいんですか。」

と念を押す啓子に、
 

「もちろん。いつもの コンビニでね。」

と言って外回りに出掛ける聡。


啓子は 複雑な思いで見送る。
 


< 155 / 227 >

この作品をシェア

pagetop