紡ぐべき糸
啓子の思いに反して 聡の表情は 徐々に曇っていく。
出張から 帰ってすぐは 悔しいほど 浮かれていた聡。
でも時々 聡の瞳が 切なく 翳っていることがあった。
明るく 笑っているけれど。
多分 啓子しか 気付いていない 聡の変化。
年が明けて バレンタインデーが近付く。
諦めようと思う啓子を 聡の 切ない瞳は 引き留める。
「横山さん チョコ。一応 恒例なので。」
朝 啓子が 聡を呼び止める。
聡は スーッと 優しい笑顔で 啓子を見て、
「じゃあ、今日も ステーキだね。恒例だからね。」
と笑顔で言った。
「いいんですか。」
と念を押す啓子に、
「もちろん。いつもの コンビニでね。」
と言って外回りに出掛ける聡。
啓子は 複雑な思いで見送る。