紡ぐべき糸

何かに迷い 何かを 探しているような聡。

無理に 仕事に集中して。


どうして。

何があったのか。

何に苦しんでいるのか。


啓子は 聡から 目が離せなくなっていた。
 

一人 何かに 耐えている聡。


力になりたいと 思っても 聡は 啓子を 求めていないから。


啓子は 聡の 苦しみを 救うことはできない。


これなら 幸せそうな聡を 見る方が 辛くないと 啓子は 毎日思っていた。
 


それでも 毎日は 容赦なく過ぎていく。

お正月明け。啓子は 聡の表情が 少し変わったことに 気付いた。


以前よりも 切ない瞳は 決意を秘めたように 悲しく光る。


明るく笑った後 スッと 寂しそうな目をする聡。


啓子が 心配そうに 見ていることなど 全く気付かずに。
 


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