紡ぐべき糸

「やっぱり横山さん 変わりました。そんな風に 彼女のこと考えられるって。横山さんも すごく 強いです。」

啓子は 溢れそうな涙を堪えて 聡を見る。


聡は フーッと ため息をついて ハンドルに 顔を伏せた。
 


ふいに啓子は 聡の頭を 抱き寄せた。


衝動的に 聡の首を 引き寄せ そのまま 自分の胸に抱いた。



静かに 啓子の胸に 寄り添う聡の頭の上で 啓子は 少しだけ 涙を流した。
 

「ありがとう。」

聡に言われて 啓子は ハッとして 聡の頭を話す。
 

「私。ごめんなさい。」

あまりにも 大胆な自分に 驚く啓子に 聡は 優しく笑って
 

「ううん。林さん 優しいね。」

と言ってくれた。
 


「私 何か 横山さんが 自分と重なっちゃって。横山さんの彼女は 私にとっての 横山さんだから。」


そっと流れた 一筋の涙を 拭いながら啓子が言う。


聡は 驚いた顔で 啓子を 真っ直ぐに見つめると もう一度 
 


「ありがとう。」



と言った。
 
 


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