紡ぐべき糸

「あれ。いつもの道じゃないですね。」

聡は いつも行くステーキハウスとは 違う方向に 車を走らせている。
 
「あそこ、閉店したんだよ。」

と言う聡に
 
「えっ。本当ですか?」

と啓子が 驚いた声を出すと、
 
「うそー。」

と聡は 楽しそうに笑う。


聡の笑顔は いつもより 温かくて優しくて。

ホッと ため息をつく啓子に、
 

「びっくりした?」

と聡は聞く。
 
「はい。何か 寂しいって 思いました。」

啓子も 素直に答える。


「たまには 違うお店に 行こうよ。」

と言う聡に 啓子が頷くと
 
「デートなんだから。」

と聡は続け 啓子は 驚いて聡を見る。


聡は 啓子の視線に 気付かぬ振りをして 車を走らせる。
 


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