紡ぐべき糸

21


「今は ペンダントだけど。いつか 指輪を 貰ってほしい。」

聡は静かに言う。

啓子は 言葉の意味がわからずに ペンダントと聡を 交互に見る。
 

「どうして。どうして私に。」

やっと口を開いた啓子。
 

「俺 自分に夢中で。気付くのが遅くて。いつも林さん 俺を 見ていてくれたよね。ずっと林さんに 助けられていたこと やっと気付いたんだ。」

聡は 照れたような 優しい笑顔を 啓子に向ける。


でも 啓子は まだ 聡の真意が わからなかった。


黙って 聡を見つめ返す啓子に、
 

「これからは 恋人として 俺のそばにいてほしい。ダメかな。」

と聡は言った。
 
「嘘。うそでしょう。」

啓子の言葉に、
 
「彼女とのこと 林さん 知っているから。俺を 信じられるまで ゆっくり 付き合いたいと思う。」

黙って 俯く啓子。

上手に 気持ちが 表現できなくて。 
 

「信じられない。私で いいの?」

真剣な目で 聡を 見つめる啓子に、
 
「林さんじゃないと 駄目なんだ。」

と聡は 照れた顔で言う。



 
< 171 / 227 >

この作品をシェア

pagetop