紡ぐべき糸
食事の後 啓子を送った聡。
誰もいない 会社の駐車場に 車を停めると 聡は 啓子を抱き締めた。
「ごめんね。ずっと待たせて。」
と言って 啓子の髪を そっと撫でる聡。
啓子は 聡の胸に寄り添い 聡の鼓動を 聞いていた。
自分が 本当に 聡に抱かれていることを 確認するように。
じっと 耳をすまして。
聡の胸に 寄り添う啓子。
しばらく 啓子を抱いた後 聡は 啓子の唇を塞ぐ。
不器用に 目を閉じて 聡の腕に 寄り掛かる啓子。
「ありがとう。」
唇を離した聡は もう一度 啓子の頭を 抱き寄せる。
啓子は 聡以外の男性とは 二人きりで 食事をしたこともない。
何もかも 聡が初めてで 聡だけだった。
もう大人なのに 何も 知らないまま。