紡ぐべき糸
「でも 俺以外の人には お茶、淹れなくて いいからね。」
聡は 悪戯っぽい目で言う。
「えー。無理。」
泣いた後の 鼻声で 啓子が言うと 聡は そっと 啓子の頭を撫でる。
「嘘だよ。」
と笑顔で言う聡。
「可愛いな。何か 俺 啓子が すごく 愛しくなっている。」
と言って 聡は もう一度 啓子を 抱き寄せた。
啓子は 何も言えないまま 聡に寄り添う。
「そうだ。さっきのペンダント 出してみて。」
聡に言われて 啓子は バッグから ペンダントの箱を取り出す。
聡は 箱を開くと そっと啓子の首に ペンダントを 掛けてくれた。
「ありがとう。」
涙を滲ませて 啓子が言うと 聡は優しく頷く。
「こんなに 大切な人が 近くにいたのに。」
と言って 聡は 愛おしそうに 啓子を見る。