紡ぐべき糸
「運転できる?」
啓子の肩を抱いて 聡は言う。
「大丈夫。近いから。」
啓子はそっと頷く。
「後ろ走って 送っていくね。」
聡は 啓子の頭に 手を置く。
「横山さん 遠回りに なるでしょう。」
啓子が 驚いて言うと、
「聡。これからは そう呼んで。」
と聡は 啓子の目を見る。
「さとし?」
啓子が 繰り返すと 聡は笑顔で頷いて もう一度 啓子を抱き締めた。
「可愛いなあ。もう一度、キスしていい。」
聡は そう言うと 啓子が 頷く前に 唇を塞ぐ。
二度目のキスは さっきよりも甘くて 熱くて。
啓子の体から 力が抜けていく。
「車、運転できないかも。」
そっと 唇を離した聡に 啓子が言う。
「いいの。慣れて。」
と聡は 楽しそうに笑った。