紡ぐべき糸

十年も 同じ職場にいた 二人だから。

お互いに よく知っていると 思っていたけれど。


二人で過ごす時間は 新しい発見も 多かった。
 

聡は 思っていた以上に 優しくて。

いつも 啓子を気使い 守ってくれる。


でも 啓子が 若い社員と 楽しそうに 話していると ヤキモチを妬くこともあった。
 

「塚田、ケイの 胸ばっかり見ていたよ。」

帰りの電話で 拗ねて言う聡。
 
「まさか。そんなことないよ。」

啓子が笑っていうと、
 
「ケイは 胸 大きいから。絶対 狙われているよ。」

と聡は 繰り返す。

確かに啓子は 聡に 告白されてから 綺麗になったから。

聡は 啓子の変化を喜び 甘く拗ねた声を出す。

「胸に パット 入れている事、誰も 気付かないんだねえ。」

啓子が言うと、
 
「えっ。そうなの?」

聡は驚いて言う。
 
「嘘だよ。見たい?」

啓子は 甘く聞いてしまう。


まだ勇気がないくせに。


聡の嫉妬が嬉しくて。
 

「見たいけど。見せてくれないでしょう。」

聡も甘く応える。

恋のはじめの 甘い時間。



ここまでの 長い道を思い、二人は ゆっくり楽しんでいた。
 


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