紡ぐべき糸
「ケイは 箱入り娘だからなあ。」
と聡は 愛おし気に 啓子を見る。
「えー。ダンボール箱。」
と啓子は笑う。
「これからは 俺の箱に 入れるんだ。」
と優しく言う聡。
「新しい ダンボール箱だね。」
と笑う啓子。
「桐の箱でしょう。飛び切り 上等な奴。」
と聡も笑う。
「少し 大き目のに してね。狭いと窮屈だから。」
啓子が言うと 聡は ケラケラ笑い、
「そのうち 箱は 娘に取られるよ。」
と言う。
「娘。」
と言って 啓子は 言葉に詰まる。
自分が親になるなんて。
まだ聡と結ばれてもいないのに。
啓子は急に不安になる。