紡ぐべき糸
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啓子は まだ 妊娠していることを 言えなかった。
取りあえず 今日は ここまででと思い フッと 息をつく。
聡に 電話をして 両親に 話したことを 伝えると 聡も
「ありがとう ケイ。俺も これから 親に話すよ。ケイの お父さんに会うの 緊張するよ。」
と聡は 思いがけないことを言う。
「えー。聡が 緊張するなんて 珍しいね。」
啓子は 少し笑いながら答える。
「俺だって 緊張くらいするよ。ケイが 知らないだけで。いつも 緊張しているんだよ。」
と聡は 苦笑する。
「信じられない。聡 いつも 堂々としていて 緊張することなんて ないと思っていた。」
啓子は 驚いて言う。
「緊張していても それを 見せないだけだよ。みんな。」
聡に言われて 啓子は 自分の浅はかさに 気付く。