紡ぐべき糸

「聡。会いたくなっちゃった。」


涙が溢れ 鼻をすすりながら 啓子が言う。
 

「俺も。飛んで行きたいよ。早く 一緒に 住もうね。」

優しく言う 聡の言葉に、
 

「うん。」

と言い 涙を流す啓子。
 
「泣かないで。もう少しだからね。もうケイを 一人にしないからね。」

聡の言葉は もっと 啓子の涙を誘う。
 

「聡が そんなこと言うから。涙が 止まらないでしょう。」


啓子の心は 希望と不安の間で揺れ 今は まだ泣く事しかできない。
 


「可愛いな。さらいに 行っちゃうよ。」


優しく 苦笑する聡の声が 啓子の胸に響き スマホを握ったまま 啓子は しゃくり上げていた。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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