紡ぐべき糸
最終章 聡
1
聡は あのバレンタインデーの後 啓子を 意識するようになった。
八年も 同じ職場で 働いていたのに。
啓子は 気持ちを 告げてくれたのに。
それまでの 聡にとって 啓子は ただの同僚でしかなかった。
あの日 聡は どうして 啓子に 話したのだろう。
誰にも 話したことのない思い。
多分 啓子は 知りたくない思いなのに。
聡は 啓子の心さえ 思いやれなかった。
自分の苦しみを 誰かに聞いて欲しくて。