紡ぐべき糸

2


『俺は とても ひどいことをしてしまった』

聡は やっと 啓子の心を 思いやった。


振向かない聡を 思い続けてくれた啓子。

啓子は 今 どんな気持ちで 聡の話しを 聞いていたのだろう。
 

もし 美咲が 恋に苦しみ その思いを 聡に話したとしたら。

自分は 啓子のような 優しさを 美咲に 向けられただろうか。

啓子は 聡のことを 聡にとっての 美咲だと言ったけれど。
 

多分 啓子にとって 一番 聞きたくない話し。


でも 啓子は 親身になって 聡の言葉に 耳を傾けてくれた。

自分のことのように 涙を流して。


そして 項垂れる聡を 温かなぬくもりで 包んでくれた。
 


もしかして 自分は、とても 大切なものを 見落としていたのかもしれない。

そう気付いた時 聡は 啓子から 目が離せなくなっていた。
 
 

< 208 / 227 >

この作品をシェア

pagetop