紡ぐべき糸
何度も 聡が 欲しがるままに 満たし続けてくれた美咲。
聡は別れ難い思いで美咲を見る。
「美咲。本当に 明日 帰っちゃうの?」
少し甘えて 言う聡に
「今度 横山君 東京に おいでよ。案内してあげるから。」
と美咲は 明るく答えた。
「行ったら また 抱かせてくれる?」
聡が言うと
「それは、どうかな。」
と美咲は 微笑んだ。
「俺、美咲を 抱きたくて どうかしちゃうかもしれないよ。」
その時 もう聡は 美咲を愛していた。
だから 抱き合うと 深い歓びに包まれる。
聡自身 そのことに 気付かないまま。
「大丈夫。横山君に 抱かれたいと思う人 たくさんいるから。」
美咲の潔さが 聡の 未練になっていく。
「でも 俺が抱きたいのは 美咲だから。」
美咲を 引き留められないと 知っているから。
余計に 聡は 美咲を 離したくないと思う。
「ありがとう。次に会うのは 十年後の クラス会かな。」
美咲はもう前を向いている。
聡は 切なく 美咲を 見つめ続けた。