紡ぐべき糸

聡の家は 米作農家だった。

まだ現役の父は 子供達に 農業を 強制しない。


聡の 三才上の兄も 大学を卒業して 就職していた。

聡は 次男だから 自由だけれど 引継ぐ物がない。
 

「毎日 夜遊びばっかり していて。就職は 大丈夫なの。」

母は 心配そうに 聡に聞く。
 

「うるさいなあ。ちゃんと 考えているから 心配するなよ。」

大人になっても 母には 遠慮のない言葉を 投げてしまう聡。
 

「お兄ちゃんは 三年になると 就職活動していたよ。あんたは 何もしてないでしょう。そんなんじゃ、どこにも 就職できないから。」

母も 負けずに 強く言う。
 

「大丈夫。こう見えても 俺、優秀だから。」

聡は 捨て台詞を投げて 家を出る。


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