紡ぐべき糸
その頃 付き合っていた 一才下の弘美は、わがままで すぐに 不機嫌になる。
「聡 次の日曜は どこかに行こうよ。」
一人暮らしの 弘美の部屋で。
体を重ねた後で 弘美は言う。
「日曜はバイト。」
聡は 冷たく答える。
「最近、聡 日曜にも バイト入れて。どこにも行ってないよ。」
弘美は 頬を膨らませる。
「仕方ないだろう。就活始めたら バイトも できなくなるから。今のうちに 少しは 貯めておかないと。」
可愛いと思って 声を掛けた弘美も 美咲に比べると 見劣りした。
第一 人間性が違うと 聡は 思っていた。
「つまんない。私 他の人と 出かけちゃうから。」
以前 聡が 可愛いと思った 拗ねた顔も 今は 何も感じない。
「行けばいいだろう。」
聡も 不機嫌に 言い返す。
「本当にいいの?知らないからね。」
涙を滲ませる弘美に 聡は イライラして、
「いいよ、好きにすれば。俺 帰るね。」
そう言って 弘美の部屋を出た。
美咲は 聡に 何も求めなかった。
聡の欲望を 全て満たして ただ 優しく包んでくれた。
時間が経つ程に 美咲への思いが 胸を占める。
車を飛ばして 家に帰りながら
『俺は何をやっているんだ』
と聡は思っていた。