紡ぐべき糸
聡は『参ったな』と思いながら 啓子の近くから 立ち去る。
この子に好かれても どうすることもできない と思いながら。
「林さん、横山に 気があるな。」
ある日、主任が言う。
「そんな事ないですよ。」
聡が答えると、
「結婚するなら ああいう 地味な子がいいよ。」
と主任は続けた。
「止めて下さいよ。」
聡は苦笑する。
啓子は 地味で 家庭的かもしれない。
でも 一緒にいて 楽しくない。
「でも 遊びなら 手を出すなよ。」
と主任は 笑って言った。
「出しませんよ。第一 タイプじゃないので。」
聡は しばらく 誰とも 付き合っていなかった。