紡ぐべき糸
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通り沿いの ステーキハウスに 聡は 車を停めた。
ファミリー向けの チェーン店。
気の利いた店が 少ない地方だし 別に デートではないのだから いいかと 聡は思っていた。
メニューを選んで 当たり障りのないことを 話しながら 食事をする。
相変らず 会話は弾まない。
聡が聞いて 啓子が答える。
でも 少しずつ 啓子はリラックスして 自然な笑顔も 見せるようになっていた。
「林さん。チョコ、ありがとうね。」
食事が終わって コーヒーが 運ばれてきた後で 聡は言った。
「いいえ。返って 迷惑をかけちゃって。すみません。」
啓子は 急に 緊張した顔になって言う。
聡は 静かに 首を振ったあとで
「でも俺 林さんの気持ちには 応えられないよ。」
と言った。
啓子は すっと俯いた。
そして 顔を上げると、
「いいんです。わかっていたから。でも 私、 自分の気持ち どうしても 伝えたかっただけだから。」
と顔を赤らめて言った。