紡ぐべき糸

聡は フッと笑う。
 

「林さんは それで いいかもしれないけれど。聞いた方の気持ち 考えた?」

控えめな身勝手さに 聡は ついキツい言葉を 返してしまう。
 

啓子は 驚いて 顔を上げると 無言で 聡を見つめた。

泣き出しそうな啓子に、
 

「ごめん。言い方 キツかったね。」

聡は いつもの 明るい口調で言う。
 

「ごめんなさい。私。」

啓子の目から 涙が溢れた。


聡は “あーあ” と思いながら、
 

「いや。気にしないで。大人気ない 言い方しちゃって。俺の方こそ ごめんね。」


こんな所で 泣くなよ と思いながら 聡は繰り返す。
 


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