紡ぐべき糸

食事の後で 啓子は、
 

「横山さん。帰る前に 少し ドライブしてください。」

と聡の車に乗って言う。


去年に比べて 驚くほど 会話が 上手になった啓子。

聡は 十分 食事を楽しめた。
 

「いいよ。」

と車を走らせながら 聡は チラッと 啓子を見る。
 

「横山さん。私 去年 横山さんに 言われたこと ずっと 考えていました。」

啓子は 前を向いたまま 話し始めた。
 

「俺 去年 ひどい事 言ったよね。気にしないで。」

聡も 前を向いたまま 答える。
 

「ううん。大人になるって 難しいなって 思いました。私 去年 まだ学生気分だったから。」

啓子の言葉に


「林さん 俺より 二つ下だもんね。本当に 若いんだよね。」

と聡は笑う。
 
「私 相手の立場を 考えるとか そういう 思いやりがなくて。自分に夢中で。子供でした。」

啓子は 解ったようなことを言う。
 

「まだまだ子供だよ。」

聡は つい ケラケラと 笑ってしまう。
 

「そうでしょうか。」

不満そうに 聡を見る啓子。
 

「うん。そう思っているうちは まだ子供なの。俺も 子供だけどね。」

聡は 笑顔で言う。
 

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