紡ぐべき糸

続けざまの愛の後、 二人は 横たわって 静かに話す。
 
「横山君。私 帰らないと。」

聡が 離さないと 知っているくせに 美咲は言う。
 
「駄目。帰さない。朝まで 美咲を抱いているの。」

甘い声で 言う聡に 美咲は フッと笑って、

「朝になったら 恥ずかしいね。」

と言う。
 
「こんなに淫らで?」

聡も 微笑んで言う。

美咲は 小さく頷いて、
 
「横山君のせいだよ。」

と言った。
 


「美咲、彼氏いるの?」

八年前の 固い体を思い出して 聡は 聞いてしまう。

美咲は そっと首を振り、
 
「いたら 横山君に 抱かれないよ。」

と聡の目を見た。


聡は 優しく頷いて 美咲の唇を塞ぐ。



美咲の体を変えた 見えない人への嫉妬が 聡を熱くする。
 


「美咲は俺だけのものだ。」

聡は 強く 美咲を抱き締める。
 

その夜 美咲は 聡が 欲しがるまま 満たし続けてくれた。


泥のような 眠りが 訪れるまで 何度も。


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