紡ぐべき糸

「横山君 ごめんね。やっぱり私 横山君と 結婚はできない。」


並んで座って 美咲の 肩を抱きながら ビールを飲む聡。

美咲は そっと 聡の方を向いて言った。
 

「うん。わかっていたよ。美咲 東京 離れられないよな。」


悲しい言葉なのに 聡は 不思議と冷静だった。

多分 心のどこかで 予想していたから。
 

「ごめんね。わがままで。」

美咲は 真っ直ぐ 聡の目を見る。
 

「逆なら 俺も 決心できないよ。俺の方こそ 自分勝手で。ごめんな、美咲。」

聡が言うと 美咲は 静かに首を振った。
 

「私が はっきりしないと 横山君 前に 進めないでしょう。」

美咲は 寂しそうに微笑む。
 

「寂しいこと 言うなよ。俺は 今のままで十分だから。こうして 美咲と 一緒にいるだけでいいんだ。だから美咲 気にするなよ。」

聡は 美咲の潔さに 胸を熱くする。




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