紡ぐべき糸

「さっき私 横山さんのこと 変わったって 言ったでしょう。」

食事の後 車の中で 啓子は言う。
 
「うん。」

聡は 前を向いたまま答える。


「横山さん この一年で すごく 素敵になったから。横山さんの彼女 すごい人なんだなって 思っていました。」

啓子の言葉に 聡は驚いて、
 
「えっ。」

と言って 啓子を見る。
 

「危ないなあ。ちゃんと 前を向いて 運転して下さい。」

啓子は 笑いながら 聡を責め 言葉を続ける。
 

「横山さん 彼女のこと すごく素敵な人で 全然 敵わないって 言っていたでしょう。でも 横山さんも すごく 素敵になっているから。そんな風に 影響できる人って 本当にすごいですよね。」

啓子の言葉は 聡の心に 衝撃を走らせた。
 

「林さん ごめん。少し 車 停めていい。」


聡は 路肩に 車を停める。


通りから逸れた農道は 真っ暗で 走っている車もない。
 

「どうしたんですか。」

啓子は 少し驚いた声で聞く。
 

「うん。ちょっとね。安全に 運転する自信が なくなった。」


聡は 切なく微笑む。
 



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