紡ぐべき糸
聡は 地元の国立大学を 目指していた。
塾に通い 真剣に勉強を始める。
努力の甲斐あって 第一志望の大学に 合格した聡。
その頃、久しぶりに 美咲の噂を聞いた。
「本城って 東京の国立女子大に 合格したらしいよ。」
ずっと 親しくしている 同じ中学の秀幸が言う。
聡はとても驚いた。
「へえ。すげえな。本城、東京か。俺達 新潟で くすぶっているのにな。」
誰もが知っている 名門大学。
聡が言うと
「地元の方が 安心だよ。東京は 怖いからなあ。」
と秀幸は言う。
聡は 東京に出る 美咲の勇気に 感心していた。
美咲は 名門大学を卒業して 東京の一流企業に 就職するのだろうか。
もう 自分とは 住む世界が違うと 聡は思った。
「何か俺 負けた気しか しないよ。」
地元の国大で 有頂天になっていたことが 聡は 急に恥ずかしくなった。
「別に 本城と 勝負してないだろう。」
と秀幸は笑う。