紡ぐべき糸

啓子も 聡と同じように 苦しみながら 聡に 執着していた。


全く 自分と同じなのに。

聡は そのことに 今まで 気付かなかった。


自分に夢中で。

啓子の心を 思いやる余裕がなかった。
 


自分は どこで 道を間違えたのだろうと 聡は よく考えていた。


聡と美咲は 何度も 交差していたのだから。
 

たとえば二十才の時。

どうして自分は 美咲の近くで 就職しようと 思わなかったのだろう。


そして八年後。

再会して 美咲を 離したくないと思った時。


どうしてすぐに 仕事を辞めて 美咲の近くに 行かなかったのだろう。
 


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